「人が集まり賑わうまち」は何が違うのか 発想の転換が迫られている企業誘致

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「少子高齢化」や「人口減少」というワードを見聞きする機会が増えている。国立社会保障・人口問題研究所によると、2030年以降、全都道府県で総人口が減少するとされているが、それが今後、ビジネスや暮らしにどのような影響を与えるのかを正確に把握している人は少ないだろう。じわりじわりと着実に進行している社会問題とどう向き合えばよいのか。われわれを含め、企業や自治体が取るべき行動とは何か。一般財団法人地域活性機構理事長の亀和田俊明氏に話を聞いた。

地域に愛着と誇りを持ち、地域資源を活用、発信していくことが重要

―― 少子高齢化や人口減少が進んでいます。

一般財団法人 地域活性機構
理事長
亀和田 俊明
1953年生まれ。地域活性化ジャーナリスト。専門誌の編集長やローカルメディアの役員を経て、地域活性機構理事長に就任。同機構では、全国の地域活性化事例や地域食材についての研究調査・情報発信を担当している。

亀和田 2008年に約1億2800万人あった日本の人口は53年に1億人を割り、65年には約8800万人になると試算されています。これほどの人口急減は経験したことのない事態で、空き家や空きビルが増加するとともに、商店街の空き店舗も目立つ中、税収減による財政悪化に悩まされる自治体は少なくありません。

最大の懸念は、地域の担い手が不足することです。例えば、神社仏閣が核となり、それを氏子や檀家が支えコミュニティが形成されていた地域では、担い手不足で祭りや行事の規模が縮小し、消滅してしまうところも出てきました。これは、進学や就職で若年層が多く流出しているのが要因です。また、地場産業、とくに1次産業や伝統産業では後継者など担い手不足による衰退が深刻です。

―― そのような中でも、人が集まるまち、賑わいのあるまちはあります。

亀和田 そこに住む人々が地域に誇りを感じるとともに、地域ならではの魅力を発信しているかが重要なポイントです。しかし、自分たちでは地域の魅力に気づいていない、あるいは気づいていてもうまく活用できていない地域が非常に多い。意欲がある首長がリーダーシップを発揮する自治体では、マーケティングの民間人を登用し、若い人のチャレンジの場を設け、新たなアイデアや切り口で賑わいづくりに成功する例が見られます。

―― そのようなまちは、企業にとっても魅力的ですね。

亀和田 ただ、そこにはまちの規模の大小にかかわらず行政のスピーディーで柔軟な対応が欠かせません。新しい制度の創設など、行政が企業のニーズに素早く対応した結果、IT企業10社の誘致に成功した例があるのですが、これは大都市ではなく、数万人規模の地方都市で起きたことです。

―― 一方で、人が集まらないまち、賑わいのないまちもあります。

亀和田 未来の担い手である若い人たちが外部へ流出しているにもかかわらず、危機感が薄い地域ですね。衰退している現実を把握できていないという、その主体は行政だったり住民だったりさまざまですが、「自力ではどうにもならないのでは」と自信を失っている傾向が強い地域は危うい。

これは少子化や高齢化、人口流出が進む地域では、買い物や医療・福祉など暮らしを維持する機能が失われつつあるなかで、住民の行動範囲は狭まり、住民同士の横のつながりが希薄化する傾向にあるからです。そして、人口減少とともに地場産業の衰退などによって、地域に活力がなくなると自治体の財政が悪化し、行政サービスの質も低下していきます。人も企業もどんどん流出するという負のスパイラルにはまってしまい、まちの存続が危うくなります。

―― まちおこしに取り組んでも、一時的な盛り上がりで終わることもありますよね。

亀和田 外部のコンサルタントなどに依存しすぎるのは気をつけてほしいですね。一過性に終わらせることなく、継続的な賑わいをつくるには、外部の力の活用も1つの手ですが、あくまでも、そこに住む人や企業、自治体が能動的に関わらなければ長続きしません。地域社会の持続可能性を高めることを共通認識として持ちながら、長期的に取り組むことが必要です。

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